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  ニュース     2019/09/19 19:41

中国:東北3省「企業誘致」アピール、遼寧省は日本に熱視線 無料記事

 経済振興・産業構造改革の一環として、遼寧・吉林・黒竜江の中国東北三省が企業誘致に強いシグナルを発している。10月1日の中国建国70周年を目前に控えて国務院新聞弁公室主催で行われている省・自治区・直轄市別の輪番記者会見では、足もとで東北3省が出そろった。各省トップが地域経済の発展状況を紹介するとともに、記者団からの質問に回答している。この中で使用された「事業環境」という単語は3省合計で60回を数え、3省以外の記者会見時をはるかに上回ったという。毎日経済新聞が17日付で伝えた。
 遼寧省の長唐一・省長は、「事業環境の最適化は遼寧省にとって特別な意義を持ち、極めて重要だ」と発言。吉林省の景俊海・省長は、「人間が自身の命を守るのと同じように、吉林省は事業環境を守る。人間が健康維持に努めるように、吉林省は事業環境の建設に努める」と述べた。黒竜江省の王文涛・省長に至っては、「黒竜江省の名誉を傷つける者がいれば、その者の職は失われる」とコメントし、黒竜江省の重要性を強調した。
 こうしたなか、インターネット上では「企業の投資活動は“山海関”を越えるべき」という表現がホットフレーズとして浮上した。山海関は、華北と東北の境界である河北省秦皇島市に所在。古来から華北〜東北を往来する要衝とみなされ、「天下第一関」と称されてきた。
 すでに大手企業の間で、これを実践する動きがみられる。騰訊HD(Tencent:700/HK)は6月、デジタル経済構築に関する提携で遼寧省政府と合意。阿里巴巴集団(Alibaba:BABA/NYSE)も7月、「デジタル黒竜江」の共同構築に向けて黒竜江省政府と協力関係を締結した。まず農業分野で提携。農業スマート化や農産品のEC販売を推進する。また、華為技術有限公司(Huawei)は8月、吉林省政府と合同研究所立ち上げで合意した。
 3社はいずれも、深セン、または杭州の両市を本拠地としている企業。「2018年中国都市事業環境評価報告」で、この2市は上位10都市に入った。なかでも深セン市は全国総合首位の名誉を獲得している。良好な事業環境の下で急成長を遂げたIT企業の東北投資は、注目に値するといえよう。
 一方、3省トップの記者会見では、「対外開放」という言葉も合計で25回使われた。黒竜江省はロシアとの貿易活性化を推進するスタンス。黒竜江省は8月、自由貿易試験区の創設が国務院によって許可された。
 東方省で唯一、海・河川・国境を同時に擁する遼寧省は、とりわけ日本に熱視線を送った。東北アジア圏の最重要貿易パートナーとみなしている。「中日貿易投資提携合作報告2018」によると、遼寧省の対日貿易額比率は全国で2番目の高さだ。日本企業の誘致にも積極的。遼寧省に投資する日本企業は、今年5月時点で770社、合算の投資額は240億米ドルに達した。
 他方、東北省で唯一、自由貿易試験区を持たない吉林省は、企業の域外進出に力点を置いている。東部への進出は、ロシアの港湾経由で実現。南部は丹東、大連、営口、天津の各港湾を利用して、京津冀(北京・天津・河北)経済圏や環渤海湾海洋経済圏との融合を図る。さらに北部は建設中の中露国際鉄道を通じて、欧州までを結ぶ最短シーレーンを開通する――という成長戦略を打ち出した。


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